ネムリネズミは夢を見る

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我が名誉にかけて!

我が名誉にかけて! 5




 アレクサンドラに近づいた瞬間大地が光った気がした。

 



 「ずいぶんと遅かったようじゃのう」



 「・・・だれ?」

 巳緒が声のしたほうを振り向くと、一人の青年が居た。

 彫刻のように美しく、ガラス細工のように繊細な雰囲気を纏いつつも、気高さが滲み出ている。そう感じさせる青年だ。

 「彼は神谷ルカ、宮廷音楽家、声楽家候補です」

 「候補?」

 「巳緒様が新しく選ぶ事になりますから・・・」

 そう言ってシリルが微笑む。

 「ふぅん・・・音楽なんてわかんないけど・・・・・・今居る人でいいんじゃない?」

 「そういうわけには。巳緒様がいらっしゃったからにはそう入れ替えを行わなくてはいけません」

 先程までいた場所とは全く違う世界に居るというのに全く違和感を感じなかった。

 「この小娘が我が姫か?」

 「貴様!巳緒様に向かってなんということを!!」

 神谷の言葉にシリルが剣を抜く。

 「えっ・・・ちょ、それ本物!?ま、まってよ!!」

 「巳緒様!止めないで下さい!!この男、不敬罪により死罪です!!」

 「それくらいでいちいち人を殺さないで下さい。私のことをなんと呼んでも構いませんから」

 巳緒がそういうとシリルはしぶしぶ剣を降ろす。

 とんでもない所に来てしまった。巳緒はここに来てはじめてそう思った。

 「どうやらこの娘の方が物分りが良いようじゃのう。全く・・・まぁ、人狼族は下等で愚かな種だから仕方ないと言えばしかないことだが・・・」

 下等?ここのモノ達はよくそれを口にする。

 「種族とか下等とか・・・どういうことですか?」

 何となくこの神谷という男には近付き難い雰囲気がある。

 「ほぅ、我が姫は何も知らぬか。まぁ良い。教えてやらぬ事もない。この国には様々な種族がおる。そなたら龍族、我ら吸血族、その男のような人狼族、死霊族、小人族、魚人族などに加え堕天もそれほど多くはないが、おる。この国では古来より種族の格付けがある。奴隷に当たるのが死霊族、小人族。それよりやや上が人狼族、その上が魚人族。我ら吸血族は貴族階級になる。そして、龍族が王族と預言者たちだ」

 扇で口元を隠しながら神谷が言う。

 「預言者?」

 「龍族は優れた予知能力を持つので預言者になる方が多いのです」

 シリルが付け加えるように言う。

 「奴隷階級って・・・奴隷制度が禁止されたのは何十年も前じゃ・・・」

 「奴隷の禁止?この国ではそのようなものは無い」

 つまり、奴隷自体が合法なのである。

 「酷い・・・」

 「そう思うのであればそなたが廃止すればよい。即位せずとももうすでに事実上の政権はそなたのものじゃ」

 ぱたんと扇を閉じて神谷が言う。

 「政権って?私はお父さんに会えるって聞いたから来ただけです」

 「ほぅ、王に会う。か。さぁて、会えるかのう」

 神谷は少し見下すような視線を向ける。

 「どういう意味ですか?」

 「さぁて、そういう意味かのぅ?」

 そう言って悪戯っぽい笑みを向けてくる。

 「からかっているんですか?」

 「そうじゃのう・・・」

 そう言って神谷は巳緒の顎に手をやり、抱き寄せる。



 「んっ・・・」



 そのまま口付けられ、とっさに神谷を突き飛ばす。

 「貴様!巳緒様に何を!!」

 シリルが再び剣を抜く。

 「ちっと味見しただけだ。いちいち口うるさい犬じゃのう」

 「何を!!」

 シリルが斬りかかろうとしたその時、巳緒がシリルの袖を掴む。

 「巳緒様?」

 「ちょっと、その剣貸してください・・・」

 「はぁ・・・」

言われるままに剣を渡すと巳緒は神谷に向く。

 「剣を抜きなさい!帯刀してるんだからそれなりに強いのよね?私だって実践向け剣術を13年もやってるんだから負けたりなんかしないわ!!」

  怒りにわなわなと震えながら巳緒は神谷を睨む。

確かにか神谷の腰には日本刀らしき形をしたものが下がっている。

 「やめておけ。そなたでは我には勝てぬ。たかが13年ででは足りぬ。生きた年月が違いすぎる」

 そう言って神谷は動こうともしない。

 「嫌でも剣を抜かせるわ。ええぃ!!」

 先手必勝の教え、渾身の力を込めて切りかかる。

 「ほぅ、我が姫はとんだじゃじゃ馬じゃのぅ」

 あっさりと巳緒の斬撃をかわし、後ろから抱きしめる。

 「おなごならばもう少し淑やかにせんか」

 そう言って巳緒の顎を押さえ、自分の方に向ける。

 「な、なんで・・・」

 「我は600年以上も戦ってきておる。たかが13年の修行で我に勝てるとでも思ったか?」

 そう言ってから、今度は頬に口付ける。

 巳緒は必死に逃れようとしたが、外見以上の力で抑えられ、逃げ出せない事がわかると、抵抗する事を諦めた。

 「まぁ、気が強い所は嫌いではない。そなたが望むなら我の手が空いているときなら手を貸してやらぬ事もない」

 「・・・手の空いているときですか?」

 「殆ど空いているがな」

 そう言って神谷は笑う。
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