ネムリネズミは夢を見る

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我が名誉にかけて!

我が名誉にかけて! 6




目的地まで歩く中、どうやらこの神谷と言う男はついてくるらしいので、時々振り返って様子を見ながら巳緒はシリルに声を掛ける。
「あの、私のお父さんってどんな人なんですか?」
その問いに、シリルは一瞬黙り込み、少し考えるようにして口を開く。
「難しい質問ですね・・・一言で言うと・・・『潔癖』でしょうか?自分にも他人にも厳しい方です。尤も今は病で臥していらっしゃいますが・・・」
「潔癖ですか?」
巳緒が問うと先程から黙って会話を聞いていた神谷が口を開く。
「そのように中途半端に言わずとも本当のことを言えばよかろうに。王は度を超しすぎて殺しすぎたとな。そしてまもなく死ぬ」
そうさして興味もなさそうにくるくると扇を回しながら言う。
「もうすぐ死ぬ?」
「神谷殿!!」
シリルが叫ぶのも軽く無視し、巳緒を見る。
「覚えておけ。そなたにも関わる話じゃ。龍族はその血によって呪い殺される」
真剣な眼差しで、淡々と言う。
「仁を失えば龍族の血がそなたを殺す。王は火龍故、気性が激しい。それ故少々、争いごとも厭わぬ面があった」
「火龍?龍族の血?よく解りません」
正直、この世界の存在すら夢か現かもわからないのだ。巳緒は龍なんて御伽噺の世界の生物だと思っていた。

故に今、この会話を御伽噺の一部であり自分の夢なのだと思った。
「まぁそう焦るな。どうせこちらには長居するのであろう?」
そう、悪戯っぽく言って、「はよぅ歩け」とせかす。
「別に長居をするつもりはありませんよ。学校サボっちゃったし・・・って!!学校!!ど、どうしよう・・・」
すっかり記憶から消し去っていたが、巳緒は学校の前でシリルともう一人に会ってこちらに来てしまったのだ。
「はて、学校とは?」
「お兄ちゃん心配してるんじゃ・・・過保護で心配性のお兄ちゃんだから・・・大事になってないといいんだけど・・・」
巳緒の兄、隆之は喧嘩好きな好戦的な人物だったが、妹には酷く甘かった。
「安心せい。こちらに十日居ようともあちらでは一日も終ってはおらん」
「えっ?」
「つまり、その・・・なんだ?時間の流れが違うのだ・・・」
少し言いにくそうにいう。
「そういえば神谷さんは日本人なんですか?」
こちらの人間で会った二人は姓がなかったが、この神谷だけは違う。
「いや、我は吸血族だ。この姓は昔あちらに行った時に知り合ったものからもらった。毘沙門天とか名乗っておったかのぅ」
少し変な古風な話し方もそのせいなのかと巳緒は思った。
「毘沙門天って、上杉謙信みたいなことを言うんですね」
軍神と呼ばれたその武将は自らを毘沙門天と名乗ったと言う。
「ふむ、越後の龍などとも呼ばれていたのぅ」
「・・・神谷さん、失礼ですが歳幾つですか?」
恐る恐る訊ねると「忘れた」と言う答えが返ってきた。
「600年生きたところで年を数えるのが面倒になってな」
神谷は極めてどうでもよさそうにそう言って、再び扇をくるくると回し始めた。



目的地と居場所に着いたときの巳緒の感想はあながち間違いではあるまい。
「・・・魔王の城?」
RPGのラスボスが出てきそうなそんな雰囲気の城だった。
きっと真夜中には城の背後に蝙蝠なんかがパタパタと翼を動かしているのだろうとぼんやりと考えながら、巳緒は案内されるままに足を運んだ。
上を見渡すと、ガーゴイルを模ったらしき石造が、城の門にはRPGに出てきそうなドラゴンの像がある。
「・・・・・・お父さんってオカルトマニアなの?」
ゲームみたいと言う他には馬鹿でかい城、という印象しか受けない。
「その、おかるとまにあとはどのようなものでしょうか?」
「気にしないで下さい・・・」
シリルと話すと疲れる。でも、何となく懐かしい気がする。
今更なながら、薄い青紫のシリルの髪にも神谷の薄紫の髪にも驚くどころか違和感すら感じない自分に笑いそうになる。
「いかがした?一人で笑いおって」
「別に。そういえばあの女の人はどこですか?」
こちらに来たときにはすでに居なかった。
「アレクサンドラですか?彼女なら先に陛下に巳緒様のご帰還を知らせに居ております」
「た、大変だね・・・」
なんでそんな中世ヨーロッパみたいなことになってるんだろう?巳緒は思った。
世界史より日本史が好きで、好きな武将は武田信玄。そんな巳緒は世界史がやや不得手だった。
「・・・あのぅ、あとどのくらいで着きますか?」
もうすでに門に入ったと言うのに、門から建物までの距離が凄い。一番近い建物までですらグラウンドと同じくらいの距離がある。
「なんだ、疲れたのか?まぁ、姫はまだ幼い故、仕方のないことじゃが・・・どれ」
そう言って神谷は巳緒を抱き上げた。
「きゃっ・・・」
「暴れるでない。歩き疲れたのであろう?」
そう言って神谷は先程から何度か見せる悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「神谷殿・・・貴方は、今日一日で何度死刑になってもおかしくないほどの罪を犯す気ですか?」
「巳緒がよいと言っておるのだ。これからの事は全て巳緒が決める。この王宮もおぬしとアレクサンドラ以外はすべて入れ替わる」
「そっ、それは・・・」
「シリルとアレクサンドラ以外は?どうしてですか?」
気まずそうなシリルと、不敵な笑みを浮かべている神谷に訊ねる。
「おぬしが血分けしたのはシリルとアレクサンドラだけだからだ。当然我も、今夜行われる夜会まではどうなるか分からぬ。おぬしが宮廷音楽家としておぬしに生涯仕える家臣を選ぶのだ」
「・・・音楽家って税金の無駄遣いじゃないですか?」
音楽家を目の前にして言う事じゃないかもしれないけど、私は音楽なんて全然分からない。
「何をおっしゃるのです!この国にとってどれほど音楽家が重要なことか・・・」
「そうなんですか?」
「ええ、キマイラを倒すには音楽家の使う樂奇が必要なんです」
「がくき?」
「これだ」
そう言って神谷は腰に挿した刀を見せる。
「・・・音楽家が刀・・・神谷さん本当に音楽家なんですか?」
片手で軽々と巳緒を抱き上げることができるほどの力。その細い体のどこにそんな力があるのかと巳緒は不思議に思った。
「この国の音楽家はそなたの世界の音楽家とはだいぶ違う。楽士はただ楽しませるものだが、この国の樂士は音楽と共に戦う」
「戦う音楽家・・・ずいぶん物騒なんですね」
巳緒はますます早く家に帰りたいと思うのだった。

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